top of page

​なぜアグロフォレストリーなのか

~活動の背景~

 

   - きれいな沖縄の海を守るために -

 

サンゴ礁島

沖縄の美しい自然のことを、「青い海に青い空!」という言葉で表現されるのを聞くことがあります。県外から観光で来る人たちから見れば、

今でも美しい海であるかもしれません。

しかし、島に住むおじいやおばあは、

「昔の海はきれいだったさー。今は汚れてしまっているよ。」

と話します。

雨の日の翌日、川は茶色に汚れ、河口付近に泥水が流れ出し、堆積しています。

陸から流れ出す赤土は栄養いっぱい、海の富栄養化はオニヒトデの大量発生とサンゴの死滅を誘発します。

シュノーケリングをしてみると、死んだサンゴの上に土が覆っているような光景を見ることがあります。これはまさに一昔前まではきっと海岸近くまできれいなサンゴが群生していたことでしょう。サンゴ礁の死滅の原因は海水温の上昇等様々な要因はあるようですが、赤土の流出もその要因の一つです。

イメージ画像:青い海に青い空、そして豊かなサンゴ礁

その赤土を一番多く出しているのが、農地です。傾斜面をそのまま開墾した畑からは雨が降るとなんの防御もなく流れにまかせて容易に表層土を流してしまいます。もし、畑が生垣や防風林に囲われていれば、土を流失を抑え、赤土を海に流さなくてもよかったかもしれません。

  - 安定した農業を続けていくために -

「これまで経験したことのないような台風」

「記録的な大雨」

「観測史上最高気温」・・・

 

 

ここ数年、天気予報で何度も聞かされた言葉です。

農業は、気候の変化や災害に対して極めて敏感に反応します。

農地も農民も、きっとこれから先異常気象と付き合っていくしかないでしょう。台風も大雨も干ばつも猛暑も、より頻繁に発生すると考えたほうがいいかもしれません。

ある農家は、フクギという伝統的に防風林として使われてきた木でマンゴーハウスを囲っていました。台風で他の農家のハウスが被害を受ける中、全く無傷でした。一方、ある果樹農家は2012年の台風で果樹が倒れてしまい、農業をやめてしまいました。

樹木は、気温の変動幅や風雨の叩きつけを抑制し、根が土を守ります。防風林を設置すると、樹木に土地を割かれる分だけ毎年の収入が減るかもしれませんが、強風に対する被害を少なくし、損害を抑えることが期待できます。

- 福祉に役立つ農業のために -

  

園芸療法とか動物介在療法といわれる心身のリハビリ法は、よくメディアで紹介されています。「~療法」と難しく言わなくても、きっと誰もが家庭菜園や登山、ペットに癒されたような経験はお持ちでしょう。

昨今、多くの団体が福祉農場を経営しています。福祉農業の場合、農産物の生産で得られる収入も大切ですが、精神的な治療、就労支援、身体的なリハビリ等障がい者が働き収穫以外の目的も重要となります。

 

アグロフォレストリーは、樹木を農業や畜産業と組み合わせるため、単作農業より自然に近い空間を造ります。樹木が果樹であるならば農作物以外にも収穫の喜びを、木陰を作るのであれば憩いの場を提供してくれます。ヤギを飼えば、無条件にあなたの手から草を取って食べてくれる愛くるしい反応が約束されるでしょう。

 

 

高齢になっても農業をあきらめない農場

畑に樹木を取り入れることは、いわゆる障害者のためばかりではありません。

高齢になればおのずと体力は衰え、不自由になっていきます。高齢者が農業をやめるときに、すべてを一度にやめてしまうのもひとつの方法ではありますが、辞めた後の生活の変化から急速に体力の衰えが進むことも考えられます。

また、高齢者が農業をやめる理由に台風等の被害にあってハウスが飛ばされたり、インフラが破壊されて修復が必要になったときです。また直しても年も年だし、と潮時を作ってしまう・・・前述のように防風林で減災できる農場を作れば、引退を決意させるほどの被害は減らせるかもしれませんし、また木陰は癒される休息場となるでしょう。

畑で栽培できる野菜類には、日陰や半日陰を好むものがあります。木かげでできる農業は直射日光が厳しい沖縄では、人にやさしい形です。

果樹は仕立て方で大きく形を変えます。低く仕立てて列状に造成すれば座っても作業でき、車いすに乗ったまま作業することを可能にします。

やれる範囲で「やれる形」を作って、災害に強く細く長く農業を続けていく農場作りもきっとこれから必要になってくると思うのです。

 

福祉農場、高齢者が参加できる農場に対するアグロフォレストリーの応用は全く未開の分野です。すでにアグロフォレストリーと意識しないでアグロフォレストリーを実践されているところもあるでしょう。これをアグロフォレストリーと認識し、分類し、科学し、公表することで知らない人が応用することが可能になると信じて、活動していきたいと思います。

 

 

  

DSC_0586.jpg
bottom of page